研究概要 |
弁護士費用を誰が負担すべきかについて、わが国では訴訟の勝敗とは関係なく、原則として当事者が各自で負担する。ただし、不法行為類型に関しては、敗訴者が裁判費用だけではなく、弁護士費用に関しても一定割合で負担することを認めている。そこで、交通事故類型の判例を題材として、実際に弁護士費用の負担について裁判所が敗訴者に命じているか、その具体的な金額に関して交通事故民事裁判判例集37巻4号(平成16年7月・8月)〜同39巻3号(平成18年5月・6月を下に分析した。裁判所の認定した損害賠償額のおよそ1割について、弁護士費用の支払いを敗訴者に認めているが、当事者(弁護士も含む)の訴訟活動を加味して判断している場合もある。さらに交通事故紛争類型に関して、裁判による解決と裁判外の紛争処理手続の役割分担に関してもあわせて考察した。 司法制度改革による法曹養成制度の仕組みが劇的に変わり、2004年度に新たに法科大学院が全国に設立され、2006年には第1回め新司法試験が行われている。2004年には、弁護士人口が2万人を初めて突破し、2007年には2万3,000人になっている。このように弁護士人口が飛躍的に増加する中で、弁護士と依頼人の関係も大きく変わろうとしている。したがって、今回の弁護士費用の敗訴者負担原則と権利保護保険に関しても、今後も継続して、理論的な研究を進めてゆきたい。 比較法の考察対象として、イギリスを主として研究してきたが、2007年法的サービス法によって、イギリス、さらにはEU諸国においても弁護士の活動形態も大きく変わろうとしている。弁護士活動のさらなる規制緩和と弁護士費用の負担、権利保護保険によるリスクの回避などについて多角的に継続して研究してゆく所存である。
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