研究概要 |
本年度は、企業結合法の枠組みにおける従属会社のコーポレート・ガバナンス改革についての研究に重点を置いた。2005年会社法により、わが国の会社法は全面改正されたが、次の会社法改正の課題は企業結合法であると考えられている。高橋英治は、以上の学術的背景の下、『企業結合法の将来像』という単著を公表して、従属会社の少数派株主保護のための立法論を、2005年会社法を前提にして展開した。本科学研究費研究課題との関係では、私法上の損害賠償責任という枠組みでは、従属会社の少数派株主保護には十分でないと提言し、ドイツ法上の有力説に基づき、少数派株主の代表者を監査役のメンバーとして、この少数派代表監査役を、少数派株主保護を目的とした従属会社のコーポレート・ガバナンスの担い手とする新制度の導入を提案した。この著作については、新潟大学法学部松中学准教授による書評が、Journal of Interdisciplinary Economics, Vol. 19 No4(2009), pp. 448-451; The Japan Society Review, Issue 19,Volume 4,Number 1(March 2009), pp. 6-8において、公表されている。また、高橋英治は、2008年9月18日に京都で開催された日独シンポにおいて、企業買収の局面におけるコーポレート・ガバナンスについてドイツ語で報告をした。また、高橋英治は、2008年2月20日にフライブルクで開催された日独シンポにおいては、公正なコーポレート・ガバナンスの基礎となる株主平等原則に関しドイツ語で報告をした。以上の業績等により、高橋英治は、2009年1月、第13回大隅健一郎賞を受賞した。
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