本年度は、上場会社の定時株主総会の活性化の要因に関する理論的・実証的分析を通じて、上場会社の株主総会の意義と機能を解明する、という本研究の目的を達成するために必要となる準備作業をおこなった。その概要は以下の通りである。 第一に、研究分担者である大鹿が、わが国の各証券市場に上場している企業を取り上げ、その定時株主総会の運営態様、財務内容および株価にかかるデータベースの整備の作業をおこなった。1991年から2000年までの期間については、本研究の開始に先立ち、すでにデータベースを構築していたため、本年度における作業では、2001年から2004年までの期間を対象とした。 第二に、研究代表者である久保田が、9社の上場会社(キッコーマン、東京ガス、全日空など)の上級経営者(会長、最高顧問など)に対し、株主総会活性化の要因についての聞き取り調査を実施した。 第三に、久保田が、本研究における理論的仮説を構築するための前提として、上場企業で株主総会が果たすべき役割について検討した。まず、買収防衛策の導入・維持・解除にあたり株主総会がどのような役割を果たすべきなのか、その議論の動向が株主総会の運営態様にも大きな影響を及ぼすと考えられることから、敵対的買収防衛策をめぐる問題について考察し、二度の国際シンポジウムでの報告もおこなった。また、上場会社のエクイティ・ファイナンスについて株主総会がどのような形で関与すべきかも問題になるため、近時、発行が急増している転換社債型新株予約権付社債(CB・MSCB)を取り上げ、それに対する会社法上の発行規制の当否について検討し、論文を公表した。
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