研究課題
基盤研究(C)
本研究では、上場会社の定時株主総会の活性化の要因に関する理論的・実証的分析を通じて、上場会社の株主総会の意義と機能を明らかにした。具体的にはまず、上場会社の定時株主総会にかかる過去16年分の情報をデータベース化したうえで、定時総会が活性化した上場会社について、利益率の上昇・情報公開量の増大・個人株主の増加といった経済的効果を実証的に確認した。また、そうした総会の活性化が株主からの働きかけの結果ではなく、むしろ経営者の意識変革によるものであることも確認できた。この結果、上場会社の株主総会は、平常時には、もっぱら経営者が経営者候補者の提示を通じて自らの経営方針を説明し、理解を求める場としての意義を有しているという結論を得た。さらに、株式持合いの解消傾向のなか、経営者が安定株主としての個人投資家を維持・確保しようとすれば、その限りで株主総会が本来的な意義を取り戻す可能性が高まるとはいえ、そのためには前提として、総会での説明に耐えられるだけの合理的な経営方針を策定し、それを現実に履践しておくよう求められる。そのため、株主総会の活性化(正常化)は、第一に、安定株主としての個人投資家を維持・確保したいという経営者の姿勢の現れであるとともに、第二に、経営者の側で、合理的な経営方針の策定・履践がおこなわれている可能性が大きいことの現れであるから、株主総会は、これらの二点がともに揃っているかどうかを映し出す「鏡」としての役割をもつという結論も得た。さらに、上記のデータベースを用いて、株主総会活性化企業が決算短信において公表する経営者予想利益の精度が向上していること、その精度の向上に対して市場が好意的に反応すること、精度の向上が裁量的会計発生項目を利用して恣意的に操作されたものではないことを明らかにした。
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