日本で建物等の区分所有に関する法律が昭和37年に制定されてから、すでに40年以上が経過し、今日、区分所有建物は都市における主要な居住形態として定着している。しかし、それに伴い、特に都市部では、区分所有建物における様々な問題が顕在化してきた。すなわち、区分所有建物の維持、管理の問題、さらに、建築後相当の年数を経過した、老朽化マンションの増加である。日本法は、その制定時に予見し得なかったこれらの問題状況に対応するための改正を重ねてきたが、現行法の下ではなお多くの問題が残されている。 本研究は、建物の区分所有法制の国際比較、主として日本の区分所有法がその制定時に強い影響を受けたドイツの住居所有権法制を対象として比較研究を行うことにより、わが国の区分所有法制のあり方を検討することにあった。具体的に、本研究では、平成17年度から19年度までの三年間にわたり、主としてドイツの区分所有法制度に関する現地調査および文献調査を行い、その現状と課題を明らかにすることを試みた。ドイツにおいても、区分所有建物について日本と共通した問題状況があることが指摘されており、今般判例および立法において大きな展開が見られる。本研究では、特に建物の管理と合意形成のあり方に重点を置いて、法改正および判例と学説の動向の調査を行っているが、これらの問題について、日本法とドイツ法はそれぞれ独自の対応策をとっており、その相違は大変興味深い。区分所有法制の国際比較のためには、単にその法制度上の相違にとどまらず、そのような相違の生じる背景を探る必要があるが、ドイツでの現地調査により、実務の現状について一定の認識を得ることができたと考える。
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