まず、イギリスでは、2000年金融サービス市場法と、同法に基づく財務省令および金融サービス機構(FSA)の規則によって、プリンシプル・べースの包括的な資本市場法制が構築されている。そして、自己認証に基づき、富裕な個人(high net worth individuals)や自衛能力ある投資家(sophisticated investors)について、一般的な勧誘制限の適用が除外されている。ただし、その対象は、投資家が追加的な支払義務や拠出義務を負わない投資物件や、主として非上場会社の株式等に限られる。また、集団投資スキームについても、富裕な投資家等向けの適格投資スキームが、FSAの認可による認可ファンドとして導入されている。規制を異にする会社型ファンドも、UK-REIT(不動産投資信託)に見られるように、課税措置と組み合わせることで、ミドル・リスクの投資物件に仕組まれている。 次に、合衆国の連邦証券諸法を見ると、1940年投資会社法に基づく証券取引委員会(SEC)への投資会社(投資ファンド)の登録や、1933年証券法に基づく発行者のSECへの登録届出の規定が、私募には適用されないものとされており、Regulation Dにより、適格投資家(富裕な個人を含む)に対する募集や35名以下の自衛能力ある投資家に対する募集等が、これに該当するとされている。とはいえ、適用が除外されるのは登録届出の規定等に限られ、連邦証券諸法の詐欺的取引禁止規定や民事責任規定の適用が除外されるわけではない。 これに対して、金融商品取引法では、富裕な個人を含む特定投資家について、一律に適合性原則等の投資者保護規定の適用を除外する制度が採用されており、問題があるように思われる。また、特定投資家等に関連する制度が、一般投資家を対象とする保護規定の一部適用除外に限られている点でも、さらに制度改革の余地を残しているものと考えられる。
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