本研究は3年継続して行われ、その成果は最終的に単行本の出版によってなされる予定である。したがって、各年度の研究はかかる成果を実現するための準備研究となる。 本研究は、内容を、(1)金融機関の規制の意義、(2)金融機関の開業規制、(3)金融機関の財務規制、(4)金融機関の業務規制、(5)金融機関の破綻処理規制、(6)規制機関のあり方に分けることができる。 平成19年度は、(5)と(6)を中心に研究を行った。(5)については、金融機関が破綻した場合、信用秩序を如何にして維持するかが課題である。さらに、金融機関の破綻後の顧客資産の保護の在り方を検討しなければならない。顧客財産の保護は、商品取引業者の顧客についても必要である。今年度は、上記の問題について研究を行った。顧客資産の保護については、基礎作業としての判例研究を行った (原稿提出済み。「判例評論」(2002号)、「私法判例リマークス」37号、「商事法務」(2008年9月25日号)。 (5)については、金融のコングロマリット化が進む中、監督機関の権限の再構築が重要な課題である。この点について、アメリカで統合の動きがあり、内外の関心を集めている。また、違反の場合の制裁の在り方も検討対象となる。特に、金融商品取引法における課徴金の在り方が近年注目されている。今年度は、これらの問題について、アメリカの最新の動きをフォローし、わが国への示唆を得た。研究成果の一部は、証券経済学会(2008年10月4日(滋賀大学))で報告する予定である。 以上の研究成果は、著書「現代の金融機関と法」の改訂に反映されている。 研究手法は、内外の文献の検討が中心となった。必要に応じて、出張による文献収集を行った。また、各種研究会において研究の中間報告を行った。電子媒体を利用してスタンドード大学とワシントン大学の関係者との意見交換を行った。アメリカの最新の動向を知ることができ、研究の成果に大きく貢献するものとなった。
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