コンピュータ・ソフトウエア、ハードウエアの取得が関連する電子情報取引における経済的損失に関わる問題について英米法を中心に考察した。コンピュータ・ソフトウエア、ハードウエアの取得が関連する電子情報取引において、当事者間に契約が存在する場合、および、直接的には契約は存在しないものの、連鎖的な契約のつながりが存在する当事者間において、どのような場合に、いかなる理由で経済的損失の賠償が可能となるかについて分析を行った。 暇疵によってユーザの生命、身体、財産が侵害された場合、すなわち拡大損害が発生した場合には、不法行為責任が成立する。しかし、暇疵の修理費用、瑕疵により目的物を使用できない利益などについて不法行為法上の救済が認められるのはどのような場合であるのかについて考察した。 このような場合、当事者間に契約関係があり、契約責任と不法行為責任の競合的な責任が認められる場合の、契約当事者間においての請求権競合問題と、当事者間に契約関係が存在しない場合に不法行為責任が追及される場合の、システムの開発者とシステムの販売者間の契約、システムの販売者とシステムのユーザ間の契約といった、連鎖的契約関係における不法行為責任の問題が存在することになる。直接の契約関係にない当事者間で不法行為責任が問題となる場合に、当事者が連鎖的な契約関係でつながっているのであれば、責任の有無・範囲を考慮するにあたり、個々の契約関係における責任配分について検討することが必要になる。双方の場合とも契約責任規範と不法行為規範、契約制度と不法行為制度との関係という問題を提起する。 電子情報取引、とりわけクライエントの要請に応じてカスタム仕様のシステムが供給され、特定のユーザがそのシステムを使用し、システムの品質上の瑕疵により、特定のユーザが損害を蒙った場合の取引における経済的損失に関わる問題については、当事者間の専門的知識の格差、供給者の専門的知識、技能、およびユーザの取引的地位、信頼の度合いを個別的に考慮する必要が生じる。
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