研究課題
基盤研究(C)
他人(委託者)のために金銭を保管すべき者(受任者)が自己名義で専用口座に預金をして分別管理をしている場合に、受任者が破産をし、受任者の債権者がその預金から債権の回収をはかろうとするとき、いかなる要件のもとで、その金銭を委託した者を保護できるか、というのが預り金の信託的管理の問題である。従来は、問題解決のために、委託者と受託者のどちらに預金債権が帰属するかという民法からのアプローチが採られていたが、平成14年の公共工事の前払金保証制度に関する最高裁判決で信託構成を用いる可能性が示された。この判例の提示した新たな問題に検討を加えたのが、本研究である。関連する判例として、平成15年に出された保険料事件、弁護士の預り金事件があるが、これらを含めて、従来の預金債権帰属アプローチでは問題解決に不十分なことを示し、信託構成を使い、当事者が信託と意識していない場合にも、救済手段として信託の成立を認めるための要件を検討した。平成18年12月8日に成立し、平成19年9月30日から施行された改正信託法は、本研究課題にも大きな影響を与えたが、その改正信託法の提起した問題点も加味している。公共工事事件におけるように、当事者が信託と認識していないにもかかわらず、倒産隔離機能を目指す信託構成を用いることができるメルクマールとは何かというと、それは、預金債権が一定の目的(信託目的)にしか使われないという使途管理の合意であると解する。改正信託法が施行され、益々の発展が期待される信託法の分野において、本研究は、いまだ研究が不十分である民法、民事手続法と信託法との適用関係の限界、整合性を探求し、今後の信託制度発展の一助となることができたと考える。
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関西大学法学論集に発表予定(http://civilpro.law.kansai-u.ac.jp/kurita/trust/index.htmlに掲載) 58巻3号
Kansai University Hogaku Ronsyu
ページ: 58-3
AKIRA, YONEKURA, ''''Development of Trust Law''''
ページ: 39-75
http://civilpro.law.kansai-u.ac.jp/kurita/trust/index.html