今年度は、インターネットの普及がポルノグラフィの制作と消費にもたらした変化の実態を把握することを最初の課題とした。そこで、インターネット・トラブルの被害者の相談に当たっている専門家に次の点について知見を教授してもらった。インターネットが社会にもたらした影響;社会的フィルタリングの崩壊;携帯電話とインターネットが子どもに与えた影響;プログの危険性:盗撮の実態。 また、盗撮を特別に取り上げ、その現状を知るためにインターネットでの事件報道を集め、盗撮機器を購入し、被害相談に載っている専門家のヒアリングをした。また、東京都内のファストフード、コーヒーショップ、ファミリーレストラン、スポーツクラブ計30件に盗撮被害のアンケート調査を行なった。ほとんどの店で、盗撮被害は認識されていないが、対策を講じている店が増え始めていることもわかった。 次に、盗撮を取り締まる法律の立法動向について、英米と日本について調べた。英米ではいち早く盗撮処罰法を立法化している。日本は議員立法として法案骨子まで作られているが、立法にはいたっていない。その結果、日本では、いまだに盗撮を取り締まる全国法がなく、条例で盗撮行為のみが規制されているが、盗撮ポルノの販売規制はないのが実態であり、盗撮ポルノの氾濫の歯止めになっていないことがわかった。 その他のポルノ規制法の動きや、「表現の自由」との理論的問題については、主として英語圏の文献収集に努めた。
|