まず「インターネット時代のポルノグラフィの実態」を明らかにするという課題について、以下の研究活動を行なった。1)まず、関係者が逮捕・起訴されるにいたった暴力ポルノ事件(バッキービジュアルプランニング事件、公判継続中)の制作現場にいあわせた或る女性AVライターから、現場の状況さらにはポルノ業界全般に関する問題点を聞いた。2)また、ポルノグラフィに出演する女性が所属する「プロダクション」と呼ばれる業者の元スタッフから、ポルノグラフィの制作の実態についてつぶさに聞いた。なお、これら2つの聞き取りは、まとめて成果報告書に掲載される。3)さらに、ポルノグラフィの使用・消費が性行動に与える変化を知るために、インターネットをつうじた「ポルノグラフィと性行動に関するアンケート調査」を行ない、集計・分析した。 次に、「ポルノグラフィの法規制と『表現の自由』の比較法研究」という課題については、主としてアメリカの反ポルノグラフィ公民権条例の違憲判決およびそれをめぐる諸論文について検討を行ない、またカナダの刑法「わいせつ物」頒布罪規定をめぐり、アメリカの同条例の影響を受けた最高裁判所合憲判決(バトラー判決)の検討もあわせて行なった。以上の成果を順次雑誌論文等として公刊し、2007年3月に『ポルノグラフィと性暴力-新たな法規制を求めて』(明石書店)として出版した。
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