本年度は、法律相談に関する各種文献研究を行うと同時に、従来から組織している模擬相談者のボランティア団体であるCLESS(Community Legal Education Supporting Service)の協力のもと、合計7件の模擬法律相談を行い、それらをビデオ収録し分析検討をなした。また、それら模擬相談の実施後に月1回行われるCLESSの会合において、(1)模擬相談の実施の仕方、(2)フィードバックのあり方、(3)模擬相談者の養成上の問題点などに関しての意見交換をなした。 その結果、現状で得られた知見を示すならば、(1)に関しては、模擬相談者の記憶能力等との関係で、実際の相談を全体として再現することにはかなりの困難があり、かなり教育ポイントを絞った簡易な設定にする必要があるのではないか、といったことが考えられた。(2)に関しては、(1)の問題とも関連するか、学習ポイントの明確でない模擬相談においては、フィードバックも難しく、ポイントが絞りづらいといった傾向があること、また、ボランティアの表現力に限界があることから、フィードバックの事例集や表現例集を作ることによって、フィードバックの仕方を訓練する必要があるのでは、といった知見が得られている。また、最後(3)に関しては、やはり一番大きな問題は募集の点であり、現在指導体制の限界もあり対外的に宣伝活動を控えている点もあり、必要な数のボランティアを確保するのが難しい状況である。まずは、この点を確保しなくてはならないといえるが、そのほかにも、模擬相談者を一定数養成するには、やはり現在続けているCLESSのような組織的運動が必要であり、その組織作りが急務であるとの結論に達しておいる。 なお、本年度は、アメリカにおいて海外視察を行ったが、UCLAやPepperdine Universityにおいては、ロイヤリングの授業におけるシミュレーション教育の重要性についての指摘も受けてきた。来年度はその様な理論的な研究も含め、今年度の研究を発展させる予定である。
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