本年は、昨年に引き続き、従来から組織している市民ボランティアの団体であるCLESSの協力を得て、名古屋大学等の法科大学院の授業等で、模擬相談者・依頼者を用いての模擬法律相談(6件)、模擬調停(2件)を実施するとともに、毎月、上記CLESSにおいて、模擬相談後の有効なフィードバックのあり方を中心に検討をなした。 それら活動の成果として、模擬相談者のフィードバックを助けるための補助者(オブザーバー)を用いた模擬相談の実施や、シナリオ作成段階での模擬相談者に向けてのガイドラインの作成といった方法が有効であると行った知見を見いだした。前者のオブザーバーは、模擬相談の際には外部からその様子を観察し、フィードバックの準備の段階で、客観的に観察していて模擬相談者の感情の動きが見て取れた場所などを指摘することによって、模擬相談者の記憶の喚起を助け、より適切なフィードバックを促進させる役割を担うものである。実際に、このオブザーバーを付けると初めての模擬相談者でも比較的多くのフィードバックが可能になり、その有効性は明らかである。しかし反面、1回の模擬相談に要する人員が増加する、あるいはオブザーバーが積極的すぎると模擬相談者の主体性が奪われると行った問題点もある。 また、後者のガイドラインは、模擬相談者にシナリオを与える段階で、シナリオ作成者の意図(とくに相談者の倫理状態についての解説)を示すほかに、初期に話すべき情報、信頼関係ができたのちの話すべき情報の区分けなどを一覧にして示すものである。シナリオ作成者の意図が明確になり、模擬相談者が演ずべき役柄が明確になることによって模擬相談者の心理的負担が軽減し、フィードバックも容易になるといった効果が見られた。反面、あまりガイドラインの縛りをきつくすると、やはり模擬相談者の主体性が奪われ、フィードバックも紋切り型になってしまう欠点も見受けられた。 今後は昨年度作成したフィードバック例の活用などと、これらの成果を組み合わせ、より有効な模擬相談者の参加方法や養成についてとりまとめをなす予定である。
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