研究概要 |
本研究は,政党得票数データから単純に方程式を解くことで政党と選挙区の政策座標が同時に定まることを利用して実データに対してパラメータの推定を行うものである.高次元空間での多峰性関数の最大値問題を解くこととなり,膨大な計算時間が要求される.平成17年度の計算で既に丸1日程度の計算時間でほぼ正確な解が得られるようになっていたが,今年度は更にプログラムの改良を進め,ほぼ1時間程度の計算で昨年度より正確な解が得られるようになった.特に,昨年度までは小政党の座標位置にしばしば計算値の不安定が見られたが,本年度の改良により解はほぼ安定に得られるようになった. 以上の結果を受けて実証研究を進めた.日本の国政選挙では選挙区の都市農村度を示す指標と座標値の間に0.7程度の高い相関が見られ有効性が検証された.これは,日本の国政選挙では左右のイデオロギーの対立以上に都市農村の対立が大きいことを示しており,新たな問題提起となっている. 同じ要領で英国国政選挙の分析を行うと,都市農村軸は有意ではあるものの日本ほど大きくなく,自営と失業を結ぶ軸と座標値の間にほぼ0.7程度の高い相関が検出された.2力国で意味ある結果が得られたので,ほぼ実用化に目処がついたと考えている. 実証研究においては,日本の国政選挙に係わる利用可能なデジタルデータの不足に悩まされている.この問題を解決するため,日本の国政選挙データ,国勢調査データについてデータベースの作成も平行して行った.簡単な計算結果から,むしろ日本史に係わる新しい結果も得られている.
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