本年度は、エリートと一般国民の保革イデオロギーの態様を比較分析した。エリートについては「2003年東京大学・朝日新聞社共同政治家調査」(東京大学法学部蒲島郁夫研究室及び朝日新聞社)の第1波(2003年7月衆議院議員調査)を、一般国民についてはJES II調査(蒲島郁夫東京大学教授・綿貫譲治創価大学教授・三宅一郎神戸大学名誉教授・小林良彰慶應義塾大学教授・池田謙一東京大学教授)の1996年衆議院選挙後調査、2003年の「東京大学・朝日新聞社共同世論調査」(21世紀COEプログラム「先進国における《政策システム》の創出」及び朝日新聞社、東京大学法学部蒲島郁夫研究室)を用いて分析した。 まず有権者について、10点尺度で測られた保革イデオロギーの分布は、1996年から2003年にかけて、7から8にかけてのやや保守的な層が減り、中間から革新にかけて分布が増えている。ただ、1996年には7〜8、2003年には3に小さな山があるが、いずれも最頻値が5で、中央の多い凸型の分布に近い。 これに対して代議士の分布は、有権者のそれと異なっている。最頻値は8で、次に6に大きな山があり、全体として代議士は有権者よりも保守側に分布している。ただし革新の1や3にも小規模な山があり、保守優位ながら革新との激しい対立がいくらか存在している。 このように代議士と有権者とでは、保革イデオロギーの分布に違いがあるが、さらに政治的争点に対する態度の一貫性についても、代議士と有権者とでは違いがあり、代議士の一貫性が高く、それは保革イデオロギーによって統合されていることがわかった。有権者の態度の一貫性は、代議士ほど高くはないが、しかし保革イデオロギーによって弱い統合は存在している。 以上の分析の中から、地方分権改革との関係に焦点を当てて論文として発表したのが、『地方自治』700号所載の論文「有権者と代議士の地方分権改革に対する政治意識」である。そのほかにも、投票行動とイデオロギーとの関係などについて分析を行っており、研究は、最終年度に向け、着々と進行している。
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