研究概要 |
本年度は,1990年代から2000年代にかけて,(1)イデオロギー対立はなくなったのか,(2)イデオロギーの争点に対する拘束力はなお低下を続けているのか,(3)イデオロギーの投票行動に対する規定力はなお保たれているのか,を長期的な観点から再検討した結果にっいて、追加的な分析を行ったうえで論文にまとめ,公刊した.(1)有権者の間にイデオロギー対立がまったくなくなったわけではないこと,(2)有権者の態度構造は,安全保障,日本型システムへの賛否,小さな政府の三つの次元に分かれているが,2000年代になって多元化がさらに進んだとまではいえないこと,(3)保革イデオロギーと支持政党や投票政党との相関はまだ高いものの,保革イデオロギーは,自民党と野党第1党とを弁別するよりも,自民党と社民・共産両党とを弁別するものになっていることなどを明らかにしたものである. またイデオロギーの国際比較分析を行った.その研究成果については,投稿準備中であるが,(1)自分の位置をイデオロギー軸上に位置づけることができる有権者は世界的に比較的多く,日本の有権者も例外ではないこと,(2)有権者のイデオロギー分布が多峰性を示すのはヨーロッパ諸国に多いこと,(3)日本の有権者のイデオロギー分布は,ヨーロッパ諸国よりも中央に偏在する傾向があり,その意味ではイデオロギー対立がかなり弱まっていること,(4)政党支持や投票政党とイデオロギーとの相関は,ヨーロッパでは高いが,日本ではさほど高くないことなどが明らかになった.
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