1.本研究の目的は、(1)21世紀初頭における先進諸国の都市政治の2類型として、東京都政とリヴィングストン市長下の大ロンドン圏政(以下、GLAと略記)とを取り上げ、主として石原都政について研究すること、(2)上記の都市政治のあり方について、都市政治学の諸理論を活用すること、(3)石原都政とGLAを都市経済政策、都市社会政策、住民統合、地方自治構造という4点から比較すること、である。そして本年度の研究実施計画は、(1)石原都政に関する基本文献の収集および東京現地での資料収集、(2)都市政治理論の研究のための文献収集、(3)GLA調査のためのロンドン現地での調査の実施、である。 2.(1)石原都政に関する資料収集としては、東京都庁その他で関連資料の収集を行った。その成果は、発表論文「都市における公共性と政治」(植田和弘ほか編『グローバル化時代の都市』、岩波書店、2005年)の第3節「21世紀初頭の都市政治の構図」中の石原都政に関する考察(218-223頁)に反映されている。 (2)都市政治理論の研究としては、具体的には、地方自治構造に関する最も基礎である、憲法における地方自治条項から始めた。そして、戦後地方自治の歴史に関する雑誌資料を活用して(利用の便を図るべく、後にこの科研費で購入した)、戦後日本における憲法地方自治条項の「改憲」史を新たに検討した。その成果としては、憲法の地方自治条項は戦後、文言の改正はなかったものの、解釈上「戦後型」「復古型」「福祉国家型」「新自由主義型」の4類型が存在することがわかった。そして石原都政が依拠する地方自治構造は「新自由主義型」にほかならないことを新たな知見として得ることができた。この点は、発表論文「地方自治条項改憲論批判」(『ポリティーク』11号、2006年)での考察に反映されている。 (3)ロンドンに関しては、2005年9月に現地調査を行い、その成果は、発表論文「都市における公共性と政治」中のリヴィングストン市政に関する考察(211-218頁)に反映されている。なおこの調査で、都市経済政策と都市社会政策をつなぐ媒介項として新たに「地方教育政策」の重要さに気がついた。このため来年度はこの点を含めてロンドン現地調査を実施したいと考えている。
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