平成17年度はフィリピン政治体制の変容について、特に労働政策、労使関係と国際援助のあり方について焦点を当てて資料収集等を行った。 経済の自由化を推進する中で、労働のフレキシブル化が急速に推進され、それにともない労使関係や国家の労働者管理のあり方も変化してきた。労働階層が多様化するなかで、国家の労働界の管理が必ずしも大きな意味を持たなくなってきた。むしろ新しく台頭してきたNGOやさまざまな要求団体が政治的なアクターとして影響を与えるようになってきた。こうした自由化にともなう国家の変容についての考察をおこなった。 国際援助に関しては、国家外のファクターがいかに国内政治に影響を与えるのかについて、日本のODAプロジェクトであるメトロセブ総合開発計画についての資料収集をおこなった。そこにはスラム住民等の貧困層を開発の過程から排除し、一方、地方有力者がプロジェクトの利権を獲得する実態がみとめられる。旧来の政治権力構造が、海外の開発援助プログラムの実施をつうじて強化されている過程を見ることが出来る。 なおこれらの途中経過については、前者の課題について、2006年7月フィリピン研究全国フォーラム(於神奈川大学)において「グローバル化と労働政策」と題して口頭報告を行った。後者については、12月の実態調査に基づき、現在報告論文を準備中である。 なお、本年度予定していた経済分野における自由化政策の整理に関しては今後の課題として残された。
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