研究課題
平成18年度は、フィリピンの政治動態を、従来の国家の枠組みを柔軟化する方向で検討した。第一に、国際機関・先進国など国家を超えた主体がいかにフィリピンの政策形成やその実施に影響するのかについて検討を行った。特にフィリピンにとって最大の援助供与国となっている日本のODA(政府開発援助)に関するプロジェクトの形成過程、および実施状況に焦点をあてた。ただし、援助供与国と受領国との関係は単純ではないが、受領国フィリピン一定の独立性が確認された。ただし、個別プロジェクト実施家課程における市民社会(住民、NGO)との利害調整に関しては、フィリピン行政がその主要な任務を果たしつつも、供与国あるいは国際機関、さらには国際社会に合意された基準と対応の影響をたぶんに受けているといえるだろう。第2に、地方分権についての考察である。フィリピンは1990年代以降、民主化を進める一環として地方への行政権限の委譲・移譲に取り組んできた。ここで議論の対象になってきたのは、形式的な地方分権の推進は、伝統的政治支配層が従来の権力構造を温存させるツールとならないかという問題である。この点について、フィリピン第2の投資地域であり、また大型開発プロジェクトも実施されているセブ市を事例に調査・検討を行った。日本ODAによる「セブ南部埋め立てプロジェクト」の政策策定過程、実施にともなう諸集団の利害調整、またプロジェクト完成後の運用体制、等を調査した。ここから得られた結論は、伝統的政治支配層が経済の自由化やグローバル化に対応する形で、経済成長型の行政運営をしており、必ずしも封建的、あるいはレント・シーキングにのみ固執する政治をおこなっているわけではないということである。いわゆる「開発国家」「開発行政」型の政治が行われている。ただし、セブという大都市圏の結果がフィリピンの一般傾向といえるかどうかは、今後の検討に付される。以上のような研究成果は「大規模ODAプロジェクトと住民問題-フィリピン・セブ総合開発計画を事例に」発達科学部『研究紀要』2007年14-2やLocal Development Project and Democracy : A Case of Japanese ODA Project in Cebu (submitted to The First Philippine Studies Conference of Japan (PSCJ 2006))等としてまとめた。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (4件)
発達科学部研究紀要 14巻2号
ページ: 249-259
人間像の発明(ヒュ-マンコミュニティー創成研究センター編)(ドメス出版)
ページ: 212-247
アジア環境白書 2006/07(アジア環境会議編)(東洋経済新報社)
ページ: 220-226
Paper presented in The First Philippine Studies Conference of Japan(PSCJ 2006) Nov.11-12, 2006, Tokyo Green Palace, Ichigaya, Tokyo
ページ: 1-10