研究課題
基盤研究(C)
本年度は3カ年の最終年度として取り組まれた。貧困政策をめぐってフィリピン国家がいかなる対応をしてきたのか、またどのような政治構造の中でそれを展開してきたのか、について検討した。そこで得られた結論は以下である。第一に、国際機関や外国援助提供国により提示された貧困プログラムは、パトロン・クライアント関係を強く保持するフィリピンの政治関係の中で、国家政策の決定過程(貧困対策大統領員会)においても実施過程(地方)においても有力政治家の利益実現の手段としても利用されている。第二に、国家とは別個に住民組織、生活改善活動などに関わる市民社会の動きは、貧困改善において実質的な成果をあげる一方で、行政政策への協力を通じて国家に包摂されるか、あるいは逆に住民の「脱政治化」を促進し、いずれも国家への対抗的な役割を担えているわけではない。第三に、経済の自由化を前提としたグローバリゼーションは、労働市場の柔軟化を促進し、労働者の生活基盤を揺るがせ、インフォーマルセクターの噌大を招き、貧困を進化させている。反面、多くの労働者が海外に雇用機会をもとめ労働環境の不安定さを緩和するチャンネルが、国家の外に問題を転嫁する役割を果たしている。以上のように、フィリピン国家は、グローバリゼーションという現象が進行するなかで、国際ドナー、市民社会、市場(労働市場)と相互に関連影響しあいながら社会政策を立案、遂行しているといえるだろう。
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神戸大学発達科学部『研究紀要』 14-2
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Proceedings of the 12th Philippine Studies Forum
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Proceedings of the 10th Philippine Studies Forum