本研究は、日本と韓国の議員、官僚の行動の違いを、両国の政治制度の差異から説明しようという目的を持つものだが、本年度については、昨年度に引き続き、韓国の国会議員や政党職員へのインタビューを行うことができた。 韓国においては、議員のキャリアが短いのに対し、日本においてはこれと対照的にきわめて長いのはなぜか、という問いは、本研究を計画する時点からの課題であったが、昨年度の調査の過程で、日韓の違いを表す顕著な組織的特徴として、「憲政会」といわれる元議員からなる団体の存在が明らかになった。本年度は、議員や政党組織に加え、この「憲政会」にもインタビューを行うことができた。 そこで明らかになったことは、大統領を中心とする党執行部が、しばしば現職議員の生殺与奪の権を握り、再選の機会を奪うという図式である。また弁護士等の副業を持つ議員は、復職が可能だが、他の多くの元議員は、最低限の生活にも困る状況であり、議員年金がなく、一般の年金制度も充実していない韓国においては、元議員の生活がかなり厳しいものであるということが指摘された。 本年度12月から2月まで、本研究の研究協力者である朴チョルヒーソウル大学準教授を神戸大学客員教授として迎えることができ、日本政治と韓国政治の比較に関する意見交換を行うことができた。両国の政党政治が大きな過渡期を迎えつつあることについて、共通の認識を確認した。また2月には、権ヨンジュソウル市立大学準教授を招き、日本と韓国の地方分権状況について、意見交換を行った。
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