本研究は、丸山真男の政治思想の思想史的研究を試みるが、そのさい丸山の著作のデジタル・テキストを作成し、その網羅的な分析によって、丸山の政治思想の構造と軌跡を把握しようとする。本年度も、謝金による研究補助を得て、丸山の著作をスキャナで撮影し、その画像をOCRソフトで文字認識する作業を進めてきた。著作権の侵害が生じないように、テキストファイルを借りることも貸すこともできないし、丁寧にOCR処理されたテキストファイルにも誤認文字が残るので、最後は人手に頼らずに点検しなければならない。その点検作業が容易でなかった。 本研究は、もちろん丸山の著作の網羅的分析に終始するものではなく、日本の社会科学史とくに政治学史の文脈に即して、丸山の政治思想の全体像を解明しようとする。とくに本年度は、丸山が1961年からの米英両国滞在を経て日本政治思想史の観点を普遍史的な発展段階論から空間的な文化接触論へ変えたと1978年に回顧していること、またヨーロッパと比べてアメリカは全くわからなかったと1967年に語っていること、しかも1961年に米国入国ビザを一時拒否され1973年にも一旦取消されたことなどに注目して、丸山にとっての米国の不可解さという問題を考えようとした。そこで丸山が1976年および1983年に滞在したカリフォルニア大学バークレー校に私自身も滞在しながら、丸山の4度の米国滞在について調査研究を進めた。その成果は一部発表したが、近いうちに全部まとめたい。
|