本研究においては、第一次世界大戦の参戦問題をめぐるデューイの議論が、それまでのアメリカ社会科学の制度構想と根底から対立するものであったことを明らかにし、その結果として生じたデューイ派知識人の分裂の中から、様々な社会科学構想が生まれてくる過程を描いた。さらに、そうした諸社会科学構想の対立の中から、社会科学者や知識人の社会に対する関係性の問題が、最も重要な争点として浮上してくる過程を分析し、1920年代の社会科学論の基本的な構図を明らかにした。また、こうした社会科学論の背景にあった、物質的な制度構造を解明し、政府・社会科学者・私的財団からなる構造が、1920年代の社会科学の制度的な基底にあることを示した。最後に、1930年代を視野に入れながら、1920年代の対立の構図がたどった経緯を分析し、1930年代の社会科学論を展開するための基礎的な研究を行った。今後は、これを踏まえて1930年代の社会科学論に関する分析を進める予定である。
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