研究第二年次の成果としては、まず20世紀政治哲学史に占めるジュヴネルの位置をオークショットおよびシュトラウスとの関係において明らかにした「ベルトラン・ド・ジュヴネルの政治哲学」(政治思想学会編『政治思想研究』第6号、281-314頁)があげられる。またオークショットのホッブズ論を『リヴァイアサン序説』(法政大学出版局から近刊予定)として翻訳し、長文の解説「20世紀のリヴァイアサン-オークショットのホッブズ解釈について」を付して、シュトラウスとオークショットのホッブズ解釈を新資料にもとづき比較検討することによって両者の政治哲学の基本的なモティーフの違いを明らかにした。オークショットについてはこのほかにも、太田義器・谷澤正嗣編『悪と正義の政治理論』(ナカニシヤ出版)所収の「主体と臣民のあいだ-リヴァイアサンにおける悪の政治学」、および佐藤正志・添谷育志編『多元主義と多文化主義-現代イギリス政治思想』(ミネルヴァ書房)所収の「保守主義」があり、いずれも平成19年度前半に出版の予定である。シュトラウス関連では、研究初年度に口頭発表した「アルキビアデス問題」を敷衍した論文の完成を急いでいる。今年度中に発表した成果としては、レオ・シュトラウス『リベラリズム 古代と近代』への書評(『週刊東洋経済』5月13日号)で、その意義をとくに現代アメリカ政治への影響の観点から考察した。ほかに本研究から得られた知見を活用したものとして、ジョン・グレイ『自由主義の二つの顔』への書評「哲学から政治への遁走は成功したか?」(『図書新聞』2799号、11月25日)を発表し、現代政治哲学の焦眉のトピックとなりつつあるマルチカルチュラリズムとオークショットの関連について考察した。
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