研究概要 |
研究代表者の山田は,2006年度において「2005年衆院選における自民党投票と政治的情報量」という論文を執筆,公表し,小泉純一郎首相によるポピュリズム戦略が政治的に無知な有権者を自民党への投票に導いたとする見方に対して,否定的な結論を導いた.また,2007年度においては全国的なサーヴェイ・データ分析から,日本ではエリート挑戦型の参加が増加していないこと,個々の参加手段相互の結びつきが時期によって変化していること,また参加における性差,所得差が減少していることなどを明らかにした. 研究分担者の竹中は,日本人のイデオロギー分析の視点から以下の発見を得た.第1に自民党一党優位体制崩壊後も,イデオロギーがわからない有権者は増えておらず,また保守化や中道化も進んでおらず,有権者の間にイデオロギー対立がまったくなくなったわけではないこと.第2に争点に対する拘束力に関しては弱まる傾向を見せつつも,とくに安全保障に関する争点を中心に保革イデオロギーは争点態度に対する拘束力をいまだに有している.第3に投票行動との関連において保革イデオロギーは,自民党と野党第1党とを弁別するよりも,自民党と社民,共産両党とを弁別する度合いが強い. 同じく研究分担者の森は,これまでの得票構造分析の集大成たる水崎節文との共著書において,小選挙区比例代表並立制という現行制度への変化が得票構造にどのような影響を与えたのかを分析している.その中で森は,中選挙区時代の得票地盤が効果的に再編されていること,自民党が従来強かった農村部において得票を減少させていることなどを発見している.
|