研究課題
基盤研究(C)
3年間にわたる本プロジェクトの初年度に当たる本年度は、植民政策学の展開を国際関係論の系譜的考察の中に定位するための、基本的作業をおこなった。まず、主権国家間関係からなる「国際秩序」と、帝国内関係にかかわる「帝国秩序」の双方から、国際関係論の系譜を再構成する視角を鮮明にするために、論文として、「戦間期における帝国再編と国際主義」(『国際問題』2005年9月号)、及び、「『帝国秩序』と『国際秩序』-植民政策学における媒介の論理」(酒井哲哉編『岩波講座・「帝国」日本の学知・第1巻・帝国編成の系譜』所収)を執筆した。これにより、従来等閑視されてきた植民政策学の展開を、国際関係論の来歴に再定位することを行うとともに、通常は対立するものと考えがちな国際主義と帝国主義の共存可能性を、トランスナショナルな理論装置が植民政策学において、「国際秩序」と「帝国秩序」を媒介する形で適用される事例から、検証するようにつとめた。また、本研究は、政治学・法学・国際関係論・歴史学にまたがる学際的プロジェクトであることを意識して、関連する分野の国内・国外双方の研究者と共同研究を進め、その成果を、酒井哲哉編『岩波講座・「帝国」日本の学知・第1巻・帝国編成の系譜』として2006年2月に岩波書店から刊行した。これにより近代日本の学知を、帝国編成の系譜として読み直す試みが、相当程度実現したように思われる。この講座には、上述の論文の他、序章として「帝国のなかの政治学・法学・植民政策学」を執筆し、学知の編成についての大まかな見取り図を提示するとともに、巻末の政治学・植民政策学の文献解題も執筆し、書誌的な知識の提示にもつとめた。なお本科研費の採用が、上記の共同研究が実質的に終了した平成17年10月に決定されたため、研究協力者に当初予定していた謝金は支払えなかった。また、メキシコCentro de Investigacion y Docenecia Economicasより刊行されている学術誌Istorに、"La concepcion del orden mundial en el Japon de la entreguerra"(戦間期日本の国際秩序)と題する論文を寄稿した。これは、「日本人による日本研究」を紹介する特集号で、スペイン語圏で第一線の日本研究者がその成果をまとめて公刊する初めてといっても良い試みであり、研究実績の海外発信にもつながるものであったといえよう。このほか、関連するテーマを扱った学術書の書評をいくつか執筆した。学会活動等としては、2006年3月18日に国際関係思想・研究ネットワークの、ラウンド・テーブル「国際関係思想の新地平」で、「国際関係論-その来歴と思想」と題する報告を行い、参加者とともに、国際関係思想のなかでのこの問題の広がりを確認した。次年度はこれらの研究実績を踏まえて、本年度は実現できなかった北海道大学・琉球大学における関連資料の調査を行うともに、戦間期から戦後への展開をより内在的に扱う研究を推進する予定である。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (5件) 図書 (1件)
岩波講座・「帝国」日本の学知・第1巻・「帝国」編成の系譜
ページ: 1-10
ページ: 287-318
Istor numero 21verano del 2005, 《Japon segun los japoneses》 (Mexico : Centro de Investigacion y Docenecia Economicas) 21
ページ: 51-67
国際問題 546
ページ: 23-34
政治思想学会会報 21
ページ: 5-9