(1)地域的な経済統合について、米州全体では、1994年にマイアミで開催された第1回米州首脳会議(キューバを除く米州34力国の首脳参加)で米州自由貿易地域(FTAA)が構想された。他方、南米地域では、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイで構成されるメルコスール(南米共同市場)が1995年に関税同盟として発足している。ブラジルは、カルドーゾ政権が推進したメルコスールを挺子に、米国主導のFTAA構想と距離を置いてきた。ルーラ政権は、多極化世界を念頭に、FTAAと他の自由貿易協定の交渉を平等視している。FTAAは暗礁に乗り上げているが、ブラジルなどメルコスール諸国は、2005年にマルデルブラタで開催の第4回米州首脳会議でもFTAAに慎里であり、米国をはじめ他の米州諸国の推進派と対立が顕著であった。だが、2006年に反米政権のべネズエラのメルコスール正式加盟によって、メルコスールが混乱に陥る事態が危惧され、ブラジル国内でもFTAA交渉再開を求める声は少なくない。 (2)南米地域の政治協力はブラジルを軸に新しい展開が見られる。カルドーゾ政権の提唱によって2000年にブラジリアで開催された第1回南米サミヅトで、南米地域の自由貿易圏の創設やインフラ統合整備の必要性とともに、「南米共同体(CSN)」の設立構想が提唱され、2004年にクスコで開催された第3回南米サミヅトで承認された。2005年には、ガイアナ、スリナムを含めた南米12力国による第1回南米共同体首脳会合がブラジリアで開催された。ルーラ政権はCSN統合プロセスなど南米の結束強化に積極的であるが、南米のEU型統合に関する懐疑論も根強く、当面はインフラやエネルギー分野などの統合に焦点が絞られている。また、カルドーゾ政権がパラグアイ危機の収拾に努めたように、ルーラ政権もエクアドルなどの政治危機の収拾に積極的な支援を行っている。
|