本年度、(2007年度)は、M・カルドーの「新しい戦争」論を理論的支柱とし、紛争後社会の国際支援政策のありかたを議論した。彼女は、1980-90年アフリカ、東欧で拡大した組織的暴力をグローバル化時代の文脈のなかで取り上げ「新しい戦争」と呼び、戦争目的、戦争行為の方法、資金の供給においてそれまでの戦争とことなると指摘した。この視点から冷戦後、テロ後の紛争の発生と展開を考察し、それに見合った紛争後社会の構築、国際支援のありかたにつき、学会報告を二つおこなった。日本比較政治学会における「ユーゴスラヴィアの崩壊とコソヴォ危機」(6月23日、同志社大学)と、日本国際政治学会での「ユーゴスラヴィア紛争とディアスポラ問題」(10月26日、福岡国際会議場)である。いずれも「新しい戦争」としてのクロアチア紛争、コソヴォ紛争をとりあげ、国際支援の課題点を現地の政治変容と国際杜会の関与のズレ、矛盾面を描写した。 また、『国際問題』誌2007年9月号には「旧ユーゴ紛争と平和構築の課題」を発表し、旧ユーゴスラヴィアのボスニア紛争とコソヴォ紛争における平和構築の課題を国際社会と日本の国際支援への教訓という形で考察した。平和構築が国際機関の存在証明、さらには各機関の間の縄張り争いの状況を呈し、「プロジェクト」としての「平和構築]「国際支援」になっていることへの懸念を指摘した。こうした復興あるいは支援プロジェグトの観点は、ボスニア、コソヴォ、アフガニスタン、イラクヘの経過のなかで、より明確になってきていることが本研究の成果のなかで明らかになってきた。さらに、本研究の過程で直面した冷戦後の「エスニシティ」問題について、『新時代の国際関係論』(高田編、法律文化社、2007年)において「エスニシティと国際関係」の論考を公表したことも付け加えておきたい。
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