本研究は、冷戦後に頻発した民族紛争や地域紛争に対し、その紛争処理や紛争後の平和構築、復興支援に大きな役割を果たした欧米諸国、国際機関の関与のありかた、また、その問題点を抽出することを目的にした。地域紛争、とりわけ旧ユーゴスラヴィアのボスニア紛争、コソヴォ紛争への介入、さらに2001年以降、「テロ後」の国際社会にあって、アメリカがおこなったアフガニスタン戦争、イラク戦争の是非、また後方支援の形で参加した日本の国際支援政策への指針を獲得することを目的とした。 研究実施計画との関連では、旧ユーゴスラヴィアの国際支援政策については、NATO空爆という形でのボスニア、コソヴォにおける人道的介入について論考を発表するとともに、ボスニアのコニッツァ市、クロアチアのザグレブ市での国際シンポジウムで報告をおこなった。また、アメリカ中心としたアフガニスタン、イラク介入の是非とその手法の問題点については、「人道的介入」論という正当化の論理すら放棄して、「反テロ戦争」という形でアメリカは国連決議迂回の直接介入にふみきり、紛争後においては自らの選定による暫定統治機構を発足させ、軍隊駐留を継続している。こうしたアメリカの「支援策」に日本はアメリカ軍の後方支援、紛争後は復興支援という形で参加した。 国際支援政策が、紛争に直面した現地の社会の平和構築、市民社会の建設にあることは言うまでもないことであるが、こうした観点から捉えるとき、本研究でとりあげた事例は、かならずしも「現地主義」に沿うものではなかったのではないか。本来の国際支援策のありかた、手法を模索していくことが重要であろう。
|