研究概要 |
本研究は、イギリスにおける二つの連続する政権交代現象を比較分析する上で、特にヨーロッパ経済統合運動への対応としてのイギリスの対外経済政策の変遷過程を直接の素材としてとりあげるものである。それを適切な文脈のもとで分析するには、それが同時に存在した他の政策の変遷過程との比較でどのような優先順位を与えられていたのかという観点からの位置づけを、対象となる各政権ごとに確認し、その上で、その位置づけが政権交代にともないどう変化したかを明らかにする必要がある。 したがって、本研究においては、まず、それに引き続くヒューム政権がその枠組みの中からスタートせざるを得なかった、マクミラン政権期の諸政策全体の優先順位の分布とその中での対外経済政策発展過程を把握・整理し、マクミラン政権末期の時点で形成されていた諸政策への優先順位配分が、特に政権中枢の政治的リーダーシップにどのようなものとして認識されていたかを明らかにする作業を遂行した。 上記の作業を遂行するために、英国立公文書館がアダム・マシューズ社と共同で、マクミラン政権期の閣議文書、議事録、および閣議以外の重要な政策決定のための各種内閣委員会や首相府の文書をも収録した公文書類のオンラインアクセス機能付きCD-ROMデータベースである、MACMILLAN CABINET PAPERS,1957-1963 on CD-ROM(全3枚、オンラインアクセス付)を主要設備として導入し、研究代表者はこのデータベースの利用環境を整備し、収録データの全体の把握と具体的分析作業の方針を立案し、自らもその分析作業の過半を担当した。また関連する最新の二次文献の収集整理作業も研究分担者とともにおこなった。 その上でまず研究代表者は、マクミラン政権における最初の対ヨーロッパ経済政策上の重要なイニシアチブとしての自由貿易地帯(FTA)構想の成立と交渉過程に焦点を当てた分析作業に注力し、その一部を論文として公表した。 また研究協力者は、上記方針に基づくデータベース分析作業の中でも特に、マクミラン政権の対コモンウェルス諸国経済政策および、その英米関係に及ぼす影響についての政権中枢での認識を主要な対象として、分析作業を行い、その成果の一部を概観的論文として公表した。
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