本年度は最終年度として研究成果報告書作成に向けた研究活動をおこなった。研究代表者は2007年6月にイギリス国立公文書館にてウィルソン政権期の対EEC政策についての公文書閲覧複写をおこない、また研究成果の中間的報告として論文2編を発表した。研究分担者も学会報告1回をおこなった。また両名とも現在、来年度6月までの研究成果報告書提出のための執筆活動を遂行中である。研究代表者が管理するウェブサイトにおいて収集資料の一覧や要約も公開した。3年間の研究を通じて得られた基本的な知見は、下記のように要約できる。すなわち、政権交代にともなう政治的リーダーシップの変遷は、政策決定者自身の設定する政策優先順位の変動を反映して、表面に現れる対外政策には有意な変動をもたらすが、政策決定の実際的作業や中長期的検討作業に従事する関係省庁中上級官僚レベルに存在する継続的かつ日常的な政策検討は、そのようなリーダーシップの変動にもかかわらず、強い政策継続のためのモメンタムを生むことが観察された。もちろん強い政治的リーダーシップがそのようなモメンタムを打破する事例も存在し、一般化するならば、客観的国際情勢の変遷と個々の政策決定者のパーソナリティの融合により外交政策変動は起こるというべきであろう。政権交代期はそのような変遷過程が短期間に顕著に現れる時期ど考えることができる。
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