研究課題
基盤研究(C)
環境統合は、基本条約に明記されるEUの義務であり、持続可能な発展を環境面から支える重要な役割を与えられている。1998年からのカーディフ・プロセスによって、農業や運輸といった関連政策では環境壌統合戦略が策定された。しかしながら、このような政策枠組みだけで環境統合が実現されるわけではない。まず理念上の定着が必要であり、環境配慮された政策イシューが設定されなければならない。政策をアウトプットする組織やそれを構成する人々が環境統合に対応できる構造と能力を持たなければならない。政策決定や実行の過程には環境統合を可能とする手続きが必要である。政策サイクルの各段階において広く配慮のポイントが存在し、直接・間接に環境への配慮が影響を及ぼすのである。環境統合の要請とこのような対応はEUに限定されるものではなかろう。しかし、EUという統合の過程にある機構においては、こうした要請がもたらす影響は相対的に大きい。EUレベルでの各組織の調整作業は、組織内・組織間関係、政策決定過程上に新しい変化をもたらし、あるいは新しい特徴を作り上げる可能性を含んでいる。また、環境統合が国家・地域・地方を含むEUガバナンスへ積極的効果をもたらしていることは明らかである。EUレベルで提示される政策枠組みは各国政策の欧州化や調和化を生じさせ、多様なアクターからの効果的な方策や有効な経験は国境や政策レベルを超えて交換される。環境統合を通し、EU内の政策連携・調整が追求されている。さらに、環境イシューが規範的にも政策優先順位的にもその地位を上げていることから、EUは国際社会で環境保護を訴えることによって存在感を高めている。環境保全が地域経済を安定化させるなど政策領域を超えた作用を持つならば、環境統合の意義はより拡大する。EUはそうした環境効果にも注目している。
すべて 2007 2005
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 1件)
日本EU学会年報 27
ページ: 293-319
総合環境研究 環境科学部創立10周年記念特別号
ページ: 73-88
EU Studies in Japan no.27
ページ: 297-319
Journal of Environmental Studies pp.73-80, special issue celebrating ten years of establishment of faculty of environmental studies
慶應法学 3
ページ: 55-68
Keio Law Journal no.3
ページ: 119-132