本研究の目的は、米軍プレゼンスを有効に利用して東アジアにおける多国間安全保障枠組の創出へ向けた現状を把握し、個々の安全保障協力の諸条件を検討し、その上で地域別・機能別協力レジームそしてレジーム相互の組み合わせにより、実現可能な重層的なレベルでの安全保障協力枠組の創出を可能にすることである。本年度は、本研究の三つの調査対象の動向把握を行った。 1.IISS(英国国際戦略問題研究所)の主催するアジア・太平洋国防大臣級会議(第1回は2002年5月、第2回は2003年5月、第3回は2004年5月に開催)で議論されている安全保障協力の内容を精査することについては、IISSの刊行物を通じて、分析を進めることが出来つつある。実際に、IISSを訪問し関係者との質疑を持つ機会がなかったのは残念である。来年度に実現を図りたい。 2.米軍が進める二国間合同軍事演習と多国間軍事演習のもたらす諸国間の安全保障協力の具体的内容を検討する。たとえば、毎年開催されているコブラ・ゴールド(米・タイ・シンガポール)、クロコダイル(米・豪)、チーム・チャレンジ(米・フィリピン・シンガポール・タイ)などに加え、準軍事組織の海上保安庁や沿岸警備隊が参加して公海上での船舶臨検実施のためのPSI(核拡散防止安全保障イニシャティブ)が行なわれている。これら二国・多国間演習に関する公開資料の収集に進めた。 3.半官半民の研究機関の意見交換チャンネル(two track channel)のもつ効果と限界を検討することにしており、その関係資料の収集に努めた。上記の二点に比べ、遅れているため、来年度以降、努力が一層必要となっている。
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