研究課題
この研究は、東マレーシアのサバ州とサラワク州の華語教育に焦点を当てて、その歴史的変遷を分析することで両州の華人社会の歴史と現状、今後を明らかにすることを目的とする。2005年(平成17年度)は、サバ州での調査および成果発表が主となった。調査日程は、サバ州の州都コタキナバル平成17年8月6日-13日、首都クアラルンプル13日-18日である。調査では、サバ開発研究所とクアラルンプルにある華社研究センター、マラヤ大学図書館などでの資料収集、サバ開発研究所研究員、サバ崇正中学校長、サバ華文独立中学理事、サバ亜庇中学校長、新紀元学院教員との意見交換を行った。上記の調査と収集した資料や文献を通して得られた知見は以下のようにまとめられる。サバ州も、半島マレーシアと同様に1960年代から「マレー語への同化政策、イスラム教の普及」が進み、すべての公的教育機関での授業言語はマレー語のみとなった。サバの華人社会は自分たちの母語や文化を守るために、独自の私立高等教育機関(独立中学)を維持・発展させる道を選択した。ただ、サバの独立中学は半島マレーシアとも同じ東マレーシアのサラワク州とも異なる「三言語教育政策」を採択し、今日に至っている。三言語教育政策とは、英語、マレー語(国語)、華語の3言語を習得し、中学の後期課程ではとくに英語のレベル向上を図るという政策である。このようなユニークな政策を可能にしているのは、サバの歴史的・社会的な独自性であり、華人社会はこの政策を支持し、高い評価を与えている。2006年度は、サバ華人のアイデンティティが他のマレーシア諸州とどのように異なるのかについて調査を試みたい。とりわけ、サラワク州での調査を行って比較を試みるつもりである。これらを通して、サバというマレーシア辺境の地の華人社会の試みが、マレーシア華人にとってモデルとなりうるのかどうかも考察してみたい。
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International Conference on Southeast Asia, University of Malay(国立マラヤ大学主催の国際東南アジア学会に提出した研究報告ペーパー、2005年12月12日)
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Occasional Seminar organized by Department of Social Science, University of Sabah(マレーシア国立サバ大学社会科学部主催のセミナーでの研究報告ペーパー、2005年8月8日)
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