【目的】本研究の目的は、申請者が考案した新しい生産性指数および所得指数を拡張し、その指数を用いて所得・賃金の異時点間比較、資本理論で問題となった集計的生産関数の基礎などについて研究することである。 【研究実績の概要】17年度の研究では、以下の研究テーマにおいて研究が進展し、新たな知見が得られた。 1スラッファの理論の解釈について:Garegnani[1984]の剰余方程式アプローチにおける尺度としての2種類の労働量とSraffa[1960]の尺度としての2種類の労働量の関係を明らかにし、スラッファの価格理論を剰余理論の視点から説明することが可能であることを明らかにした。その成果である論文‘A Surplus Interpretation of the Sraffian Price Theory'は、ヨーロッパ経済学史学会2005年大会(Stirling大学、17年6月11日)、ローマ大学第3、スラッファ研究センター(Garegnani教授ほか、18年3月22日)で報告された。 2パシネッティ教授の構造変化の動学の研究との関係について:スラッファ・モデルに基礎をおく申請者の生産性指数を用いて動学的標準商品と一般物価水準の研究を拡張できることが明らかとなり、Pasinetti[1981][1993]の構造変化の研究の拡張・深化に、申請者のスラッファ・モデルに基礎をおく研究と生産性指数が有用であることが明らかとなった。その成果は、2006年4月末のヨーロッパ経済学史学会2006年大会において、パシネッティ教授の「構造変化と経済成長」の出版25周年を記念する特別セッションに招かれ‘Pasinetti's Dynamic Standard Commodity and the General Price Level'を報告する予定であり、報告集のための5頁の報告論文の短縮版も作成し提出した。 3スラッファの経済理論及び資本理論について:スラッファ・モデルにおける価格の意味、および資本理論における価格効果についての研究成果をもとに、フランクフルト大学のB.Schefold教授を17年11月29-30日に群馬大学に招き、討論を行った。
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