研究課題
私的観測下のくり返しゲームの従来の均衡は、巧妙に構成されているものの、かなり複雑な性質をもっており、はたしてそのような行動が現実に取られるかどうかについては疑問がもたれてきた。これに対し、本研究が発見したweakly belief-free均衡は直観に合致する単純な戦略を取る強いいインセンティブを与える点で、より現実性を持つものである。しかも、そのような均衡が、効率性を達成する基本メカニズムである「非対称的懲罰」を体化しており、そのような効率的懲罰を体化できないbelief-free均衡よりも高い利得を達成することを明らかにした。当該研究をまとめた論文、Weakly Belier-Free Equilibria inRepeated Games with Private Monitoringは、ゲーム理論学会世界大会の招待講演に選ばれたほか、スタンフォード、ハーバード・MITをはじめとする米国の13大学で発表された。また、くり返しゲームを用いて歴史・制度に深い洞察を与えたグライフ氏のInstitutions and the Path to the Modern Economy(邦題『比較制度分析』)を監訳し、さらに、標準的な経済辞典と見なされているNew Palgrave Dictionary of Economicsの第2版の「くり返しゲーム」の解説を担当し、これを刊行した。本研究のもう一つの柱である確率的なゆらぎの下での秩序の形成に関する研究は、最終的にJournalofEconomicTheoryに掲載された。この研究では、非分割性を持つ財の分権的交換を分析し、交換の過程にゆらぎがあると、そのゆらぎの性質にしたがって功利主義的な社会厚生関数や、ナッシュ社会的厚生関数が最大化されることを示した。これは、いくつかの公理から出発する従来の研究と対比して、社会的厚生関数の研究に新しい視点を導入したものと言える。
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Journal of Economic Theory 140,No.1
ページ: 328-338