研究課題
基盤研究(C)
本研究は、マルクス経済学の立場から、社会的再生産の構造と資本主義経済の動態の関係を原理的に考察したものである。その方法論的な特徴は、スラッファによって示された物的な投入産出関係の枠組みを動態理論として活用している点にある。本研究を通じ、以下の点があきらかにされた。(1)信用創造は、再生産における貨幣の出発点への還流法則により、返済還流が繰り返し行われることを基礎にして継続される。したがって、固定資本投資が停滞すると、貨幣が流通から引き上げられたままとなるため、信用創造が困難となる。(2)資本主義経済では、一般に利潤率が利子率よりも高いため、好況期には株価が際限なく上昇する傾向がある。(3)不況が持続するのは、投入産出関係がただちに変化しないことにより、貨幣賃金率が下落しても実質賃金率が下落ないためである。したがって、不況の解消には、投入産出関係の再編が不可欠となる。(4)根本的な技術革新は、労働者の使用する生産手段量の急速な増大をもたらすため、既存の生産手段量のもとでは大規模な産業予備軍の形成をひき起こす可能性がある。(5)資本主義的動態の様相は、社会的再生産の構造に応じて変容する。したがって、原理的動態論は、単一の確定的な動態像を描くのではなく、多様な可能性の東を示すべきである。そのような動態論が、現実の動態を分析する基準として有用性をもつ。なお、(4)については、今後、さらなる理論的・歴史的考察を行う予定である。
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