研究概要 |
効率賃金仮説,具体的には非怠業モデルをもちいて労働市場をモデル化した.労働組合モデルをもちいると外国人労働者の非合法雇用や超過滞在にたいする制裁などが労働者の効用にどのような影響をおよぼすのかが示しにくいが,効率賃金仮説をもちいると労働者の効用が明示的に示されるばかりでなく,労働者や企業が合理的に行動するもとで労働市場の働きの結果として内生的に非自発的失業がしょうじる,国際労働移動の最近の研究では国際労働移動に係わる個別の現象に関心を向ける傾向が強まっているが,効率賃金仮説を仮定した類似のモデルをもちいて,国際労働移動をしょうじさせる要因,自国人労働者や自国企業におよぼす影響,国際労働移動と情報の非対称性との関係,外国人労働者の非合法雇用や超過滞在にたいする制裁の効果などの国際労働移動に関する主要な問題を系統的に分析した. また異なる生産性を持った労働者の賃金率をそれぞれの非怠業条件を満たすように決定することにより,高い生産性を持った労働者だけでなく低い生産性を持った労働者も戦略的送金(strategic remit-tances)の誘因を持つ可能性をしょうじさせた.このような場合,高い生産性を持った労働者と低い生産性を持った労働者が同時に受け入れ国へ移動しようとするため,結果的には受け入れ国で外国人労働者と企業の間で情報が非対称的となり,高い生産性を持った労働者も低い生産性を持った労働者も賃金を高めることができなくなってしまう,その結果,高い生産性を持った労働者と低い生産性を持った労働者の両方が同時に戦略的送金の誘因を持ち,その結果,両者ともに賃金を高められなくなってしまう.従って戦略的送金の誘因がその目的とは反対の結果をもたらしてしまう可能性があることを明らかにした.
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