本研究は、二年計画で経済学の、自立したディスプリンであるという社会諸科学の中でも稀有な特徴を、19世紀初頭から現代にいたるタイムスパンの中で歴史的に跡付けることを目指すものである。そうしてその研究を海外の研究者との協力によってすすめることに特色がある。本年度は、交付申請書に記載したとおり職場を共にする千賀と只腰がてきぎ討論を行いながらそれぞれウェイトリ、ケインズについての研究をすすめた。千賀はその一部を平成18年3月に行われた日本イギリス哲学会のシンポジウム「イギリス思想におけるプロバビリティ」において発表をした。また只腰は、ウェイトリが大きな影響力をもったアイルランドのトリニティ・カレッジの図書館を訪ね、彼がその大学に創設した経済学教授ポストに関連する、自筆の手紙等の一次資料の調査をおこなった。この調査はこれまであまり知られることのなかったディスプリンとしての経済学のアイルランドにおける生誕の経緯をしるのに有益であった。 海外の研究協力者との合同研究の面では、アルヴィー、デューズ両氏と日常的にメールでの意見交換を行うと同時に、平成18年2月に両氏を日本に招いた。その折には、千賀、只腰と4人でこれまでの研究の進捗状況を報告しあい、さらに今後の研究の進め方について相談した。さらに、構浜市立大学においてワークショップを開催して両氏にそれぞれ、アダム・スミスとセンについて報告をお願いした。そのワークショップには日本の研究者が数名参加し有意義な討論をすることができた。研究計画1年目の出だしとしては順調なスタートをきったと思っている。
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