研究概要 |
昨年度(平成17-18年度)の研究成果並びに今年度(平成18年-19年度)の研究過程を経済学史学会全国大会(平成18年度5月27日・28日神奈川大学開催)で,「マーシャルとレイトン-ケンブリッジ学派の知の継承と知の創造-」というタイトルで報告を行った。 今年度はケンブリッジ大学のトリニティカレッジにあるレイトン文書の資料調査とレイトンの著作である『物価研究入門』の検討を中心として研究を行った。これらから次のことが明らかになった。 1.平成18年9月4日〜8日までケンブリッジ大学トリニティカレッジのレイトン文書を調査することにより,ケンブリッジ大学での応用経済学分野におけるマーシャルのレイトンへの教育の期待並びに彼の応用経済学への貢献を明らかにすることができた。ケインズをはじめケンブリッジの経済学者との関係も明らかにできた。 2.レイトンの『物価研究入門』を検討することにより,マーシャル経済学の核心である有機的成長の要素である社会進歩が物価上昇期・下降期においてどのような影響があるのかを分析した書物であることが明らかになった。また,レイトンの『物価研究入門』という書物は,彼が統計という分析道具を使い労働者の生活改善を目的とした物価の史的研究であるという評価もできる。 3.ケンブリッジ学派でのレイトンの位置づけとしては,マーシャルが創設した経済学トライボスから生まれた経済学者であり,マーシャル経済学の伝統を受け継ぎ実証経済学の創造的な分野を開拓した人物として,レイトンを位置づけることが可能である。 これらの研究成果を平成18年7月2日で開催されたケンブリッジ学派の経済学の研究会(一橋大学)において,「ケンブリッジ学派におけるウォルター・レイトン-ウォルター・レイトンの『物価研究入門』を中心として」というタイトルで報告した。また,平成18年12月16日経済社会学会西南部会(神戸大学)において,「ケンブリッジ学派におけるアルフレッド・マーシャルとウォルター・レイトン」というタイトルで報告を行った。さらに,研究の成果を平成19年9月に開催される経済社会学会全国大会において報告を予定している。
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