研究概要 |
1,新しい知見の発見…本研究の目標はベヴァリッジの経済思想を手掛かりにして、福祉国家体制を支える思想の起源と現代性を抽出することにあった。この研究期間で、福祉国家理念の起源はケインズの管理経済とベヴァリッジの社会保障の密接な紐帯であると結論した。ベヴァリッジは「官僚型経済知」という新しい経済思想の型をケインズ等とともに作り上げ、国家(政治)-市場(経済)-共同体(社会)の鼎立という思想体系を作り上げたことが判明した。その核に「経済参謀論」が存在することも明らかになった。単著『ベヴァリッジの経済思想』(昭和堂、2007)を上梓する過程で、この知見を発見できたのが、本研究の最大の成果である。その他。英文を含む論考を数多く発表することで、発見した知の流布にも腐心した。 2,一次文献の収集と活用…2005.9(ロンドン)、2006.12(ウィーン)、2007.12(ロンドン)において、集中的にアーカイブワークを行い、学術自由会議やロビンズ関係、ベヴァリッジ関係の文書を大量に収集した。そのいくつかはデジタル化してある、こうした一次文献を用いて、多くの論考を出すことが可能になった。 3,学会・研究会の活用…京阪経済研究会を立ち上げて主催し、3年間で16回の研究者交流を行った。東京など遠方からも討論者を常時呼び、いくつかは10名以上の招聘という大型研究会となり、近隣の政治学・倫理学・社会学を含む研究者とも大いに交流を果たした。
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