研究課題
平成17年度の研究では、経済ファンダメンタルズ時系列相互間の一方向因果性の構造について従来の研究よりも正確に特徴づけを行うため、本研究者がまえに導入した偏因果性諸測度(partial causal measures)について、時系列モデル識別、一方向偏因果測度の推定・検定法の研究ならびに計算アルゴリズムの開発、実データへの応用といった諸問題を研究調査した。第3系列が存在する場合の二系列間の因果関係をいかに定義するかについて、第3系列による一方向効果を除去した後での二系列間の因果性であるとした本研究者によって提案された偏因果測度の規定にもとづく統計的推測理論と応用を体系的に展開した。具体的には本研究では、共和分ARMAモデルなど、一定の母数型非定常時系列モデルにもとづいて偏因果測度を統計的に解析するため、Whittle型尤度関数に基礎をおいた、推定・検定法を採用しているが、通常の因果測度とは異なり、偏因果測度の推定においては、ARMAスペクトル密度関数の正則分解が必要となる。このスペクトル正則分解を数値計算として実行するアルゴリズムを本研究者はロザノフの理論を数値的に実行できる形に改良した。この方法により、識別されたモデルから一方向偏因果測度、相互性測度を数値的に測定することが可能となった。さらに平成17年度の研究では、関連分野の最新の文献やデータ収集を行うとともに、研究者との意見交換を行い、有益な情報を得ることができた。プログラム開発、モンテカルロ法などのコンピュータ・シュミレーションおよびマクロ経済時系列への実際の適用のため、主たる計算は、東北大学情報シナジーセンターのスーパーコンピュータSX-4/128H4を使用した。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件)
Journal of Time Series Analysis Vol.26,No.3
ページ: 463-486