研究課題
平成18年度の研究では、経済時系列相互間の因果関係について従来の研究よりも正確な定量的特徴づけを行うことを目的として、第三の時系列が存在し、それが問題となる二系列と相互依存関係にある場合の偏因果性諸測度(partial causal measures)について、時系列モデルの特定化、一方向偏因果測度の推定・検定法の研究ならびに計算アルゴリズムの開発、実データへの応用といった諸問題に取り組んだ。偏因果測度の測定の基礎となる共和分ARMAモデルについて、 Whittle尤度にもとつく推定・検定法を採用し、その推定・検定をすることとしたが、尤度最大化の数値法では、従来あまり注意がはらわれなかった、共和分の根条件を満たすように、単位根の数と単位円の外にある固有方程式の解の数を制御して尤度関数を最大にするプログラムの開発をおこない、実用的な計算法を設計することができた。通常の因果測度と異なり、偏因果測度の推定・検定においては、ARMAモデルであっても観測データから直接ARMA係数を推定できず、スペクトル密度関数の正則分解が必要となる。平成18年度研究では、この正則分解を数値計算として実行するアルゴリズムを本研究者はロザノフの理論を数値的に実行できる形に改良した。この方法により、識別された共和分ARMAモデルから一方向偏因果測度、相互性測度を数値的に測定することが可能となった。第三系列が存在する場合の時系列間のフィードバック関係については、これまでにも第三系列の効果を除去するさまざまな方法が提案されてきている。しかしこれらはいずれも、フィードバック関係をゆがめる弱点がある。本研究の成果と特徴は、第三系列が対象となる二系列へ及ぼす一方向効果のみを除去する方法について、実際の非定常経済時系列にたいして適用できる、推定・検定の数値法を導出することができたことにある。
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研究年報「経済学」 68巻3号
ページ: 53-76
Journal of The Japan Statistical Society vol.37, no.1
Journal of The Japan Statistical Society vol.36, no.2
ページ: 149-171