上記研究課題を研究する最終年度として、今年度は主に日中韓の産業別生産性比較を中心に研究を進めた。 1)生産性の計測式にはいろいろなものがあるが、ここでは全労働生産性という概念を使用して計測することにする。生産物を生産するために必要な労働には当該産業で直接必要な労働だけでなく固定設備や原材料を生産するのに必要な間接労働もあり、これらを合わせて全労働という。生産物単位量当り必要な全労働量を計算し、その逆数として労働単位量当り産出される生産物量を求め、これを全労働生産性と呼ぶ。全労働生産性は、生産物単位量を生産するのに必要な直接労働、固定設備、原材料の量が少なければ少ないほど高くなるが、それだけでなく固定設備や原材料を供給する部門の生産性が高ければ高いほど高くなる。この全労働生産性を用いて日中韓3ヶ国の産業別生産性水準の国際比較を行った。特に中国に関して1987-92年の期間は、経済成長率は高かったが生産性上昇率は高くなかった。しかし、1992-97年、1997-2002年に関しては経済成長率だけでなく、生産性上昇率もかなり大きく上昇している。それは日本がもっとも急速に上昇した1960年代、韓国が最も大きく上昇した1985-95年の生産性上昇率と比較しても遜色ない成長率であることが分かった。その成果を第7回日本・中国経済統計学国際会議(中国・西安で開催)で報告し、また、その一部を「日本と韓国の生産性上昇率の国際比較」(『立命館経済学』)として公表した。 2)中国における国内総生産(GDP)推計制度の成立と発展過程、長期遡及推計と遡及改訂の経緯、数値データの作成と公表プロセス、主要データソースと推計方法近年国家統計局の改革施策、および現在の問題点等について、中国国家統計局副局長許氏による関連論文を検討し翻訳発表した。
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