高頻度金融時系列データを用いた分析としては、京都大学経済研究所の西山慶彦教授との共同研究"Nonparametric Estimation of Multivariate Integrated Volatilities"(現在欧文審査制ジャーナルに投稿中)において、非同期的に観測される拡散過程についての多次元のボラティリティの推定方法について理論的考察を行い、国債先物ティックデータをもちいた共分散の推定を行った。その研究成果は科学研究費研究集会「確率統計学における漸近的方法」(平成17年12月7日〜9日)で報告された。また、横浜国立大学大学院生宋明子氏との共同研究"Parameter estimation of diffusion processes via GARCH MLE"では、データが離散間隔で観測される場合、連続時間の拡散過程のパラメータを、GARCHモデルによる近似を用いたGARCH最尤推定量の問題点について考察した。その論文では、GARCHモデルが真の拡散過程に近づくにつれGARCH最尤推定量のバイアスおよび分散はきわめて大きくなることを指摘し、高頻度データをそのままもちいることの危険性を示した。その成果は統計関連連合大会(平成17年9月12日〜15日)で報告された。その後の進展で一般化最小二乗法を用いてこの問題をうまく回避する方法を見いだし、関西計量経済学研究会(平成18年2月18日〜19日)で報告した。また、同研究会では京都大学経済研究所の西山慶彦教授および京都繊維工芸大の人見助教授との共同研究"Sequential unit root test"を報告した。その論文では単位根検定を逐次検定の方法で行うという新しい手法を提案し理論的考察を行った。その論文の問題意識としては、高頻度金融時系列データが逐次的に観測される場合の、非線形を含めた非定常過程の判別方法としての単位根検定を考察することにある。また、横浜国立大学大学院生秋山宣久氏との共同研究"Empirical likelihood estimation for regression model with ARCH errors"で考察された経験尤度法をベイズ的に発展させるために、ノンパラメトリックなベイズ推定を研究中である。
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