研究課題
基盤研究(C)
価格や技術構造の変化を通した中・長期的な視点からの産業部門別評価が可能となるCGEモデルを応用した既存の経済政策評価研究は、データ制約上の問題などから一国または国際間を対象にしたものがほとんどである。これに対して、国よりも下位の県や市のレベルの地域では価格の変化、域外漏損、生産要素移動、域際スピルオーバーといった影響を特徴的に受けやすく、それらを明らかにしつつ、地域経済政策を評価していくニーズが高い。本研究は、県や市などの地域レベルでのSAMを作成し、それに基づいたCGEモデルを構築することである。初年度は既存研究のレビューとデータの収集を行ったが、両方とも非常に限られていることを確認した。地域SAMを作成するには都道府県あるいは市レベルの産業連関表と経済計算が必要となる。全都道府県では産業連関表と経済計算は一応作成されており、地域SAMに必要な全般的データは入手可能であった。しかし、政府部門をさらに細かく都道府県、市町村、社会保障基金、国出先機関と分かれた一般政府部門の所得支出勘定(作成方法はまだ確定していない)を作成している地域は13県に限られる。一方政令市においては一部の市においては産業連関表と経済計算がまだ作成がされていない地域もあるのが現状である。政令市においては大阪市のみが一部を作成している状況である。これがあると、政府間での金額のやり取りが詳細に把握することができ、SAMにより国から地方への税源移転などの分析が可能になる。本研究ではこうしたデータ制約条件を満たした地域の内、比較的経済が閉じた北海道・沖縄について初年度から、及び産業連関表作成に熱心な兵庫県のケースについて、また政令指定都市ではデータ条件を満たした大阪市について第2年目に、SAM(社会勘定行列)を作成した。そして、北海道と沖縄については、地域CGE(計算可能一般均衡)モデルの構築を行った。遠隔地である沖縄県や北海道の場合運輸政策が地域経済発展に重要な鍵を占めるため、運輸部門の効率化政策の経済インパクトを評価した。両地域とも輸送改善は短期的には輸送費節約となるものの、長期的にはむしろ移入を増加させて一層非もの作り経済に陥ることがCGEモデルで指摘されるため、製造業の強化などの協調政策が必要となる。しかも、海上輸送距離が長い沖縄の方が、北海道より一層顕著にその傾向が現れている。
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商学論究 55(印刷中)
Shougaku-Ronkyuu, Kwansei Gakuin University, Research Institute of Management 55(in print)
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