2年目の平成18年度は、基礎資料の収集確認と関連データの入力作業及びそれを用いた簡単な分析を行なった。「法人企業統計調査」調査票の統計目的外使用承認申請が認められた調査の一環としてこの研究を連動させことが可能となり、下記第2の焦点の作業が大幅に補充可能となった。本年度は、主としてこの統計を用いた作業を実施した。今年度までの研究を踏まえた本格化と取りまとめの作業が最終年度の課題である。 検討の焦点となる銀行、とりわけ破綻銀行のコーポレートガバナンスに注目する本研究では、日本長期信用銀行と日本債券信用銀行の2行の元取締役に対する刑事及び民事訴訟で用いられた裁判資料の積極利用を企図している。具体的検討のためには、実際の裁判に関与した法律家を含めた多方面にわたる「関係者」の協力が必要である。第2審へ進んだ民事訴訟の多くは和解で決着したが一部は係争中であり、別件は最高裁で係争中である。この事情もあって、関連情報の入手との「関係者」の協力の確保について、多少、予定より作業が遅れている。 もう1つの焦点は、銀行を構成メンバーの一部とする金融・資本市場の現実の機能の仕方である。金融・資本市場の研究においては、従来、銀行中心主義とででもいうべき先入観・偏見が強力に作用していた。より広い視点に立って、実質的に銀行と競合しあるいは補完関係にあった、資金の取り手である企業にとっての「代替的資金調達手段」にも注目する必要がある。ノンバンクおよび企業間信用を提供する事業会社等がその代表である。実際、銀行の「不良債権」の多くがこれらに関連して発生した。とりわけ企業間信用に関する情報と研究の蓄積が乏しい。この点の検討には、資金の取り手に関する詳細な情報が必要である。法人企業統計を利用する研究と連動させる事により、その道が開け、今年度実施した予備的な検討から、今後の実り多い成果を予定している。
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