研究概要 |
第1に,規制と競争における企業の統合と分離を鉄道事業について研究を行うため,日本と異なって上下分離によるフランチャイズ制を用いた民営化を行ったイギリス国鉄について,民営化後の実態に関する調査を行った。昨年春から文献調査を行い,9月に現地訪問をしてヒアリング調査を行った。訪問先として,イギリス鉄道規制当局であるOffice of Rail Regulation,鉄道インフラの保有と保守管理を行うNetwork Rail,フランチャイジーとして鉄道事業を行っているFirst Scot RailとNorthern Rail,およびNorthern Railの親会社のSerco,イギリスおよび日本の鉄道に関する著名な研究者であるイアン・スミス博士(ネイピア大学)を訪問し,質疑応答を行った。現在も引き続き,収集した資料や文献を中心に研究を行っている。 第2に,昨年度に行った,ルーマニア鉄道民営化の実態調査に関する研究を進め,吉野一郎「EU統合とルーマニア鉄道の自由化」として発表した。 第3に,民営化における垂直分離の利用に関する理論的研究と,日本の国鉄と道路公団の民営化の事例研究を行った。その成果は,柳川隆「新しい日本型産業組織にむけて:競争促進と投資確保のための民営化」三谷直紀編『新しい日本型経済パラダイム(第1巻)』所収(勁草書房,近刊)としてまとめた。 第4に,昨年行っていた研究の成果を,柳川隆・川濱昇編『競争の戦略と政策』(有斐閣)出版した。そこには,柳川隆「競争の経済分析と政策」(第1章),吉野一郎・瀬領真悟「共謀と協調戦略」第4章,柳川隆・泉水文雄「垂直的統合」第7章,吉野一郎・川濱昇「参入阻止と排除戦略」(第8章)が含まれている。また,柳川隆「市場化社会を支える法と法律家の役割-経済学の視点から」『神戸法学雑誌』も合わせて発表した。
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