本研究の第一の目的は、都市再開発の遅れを助長している原因を追究し、その原因によっていかなる社会的費用が発生しているかを「法と経済」の観点から、理論的・実証的に研究する点にある。 第二の目的は、再開発を阻害している法制度や規制によって、どの程度の社会的費用が発生しているかについて計測したうえで、不動産にかかわる複雑な権利関係を調整し、都市再開発やマンションの建て替えを促進するための新しい手法を考案する点である。 こうした目的を実現するために、本年度は、マンションの建て替えや都市開発を促進する上で、所有権や区分所有権、また法改正が実施された新しい抵当権制度、定期借家権などの意義やあり方を検討した。そのうえで、これらの権利間でどのように整合性が図られるべきかについて整理・検討した。とりわけ権利の衝突が生じやすい所有権と賃借権、区分所有権者間、抵当権者と賃借権者の間にどのような利害対立があるかを明らかにした。また理論的な観点から、これらの権利者間の利害を調整し、権利の衝突を緩和するためには、いかなる法制度が必要かについて、規範的な観点から検討した。 次に、権利調整の問題が生み出している社会的な費用がどの程度の大きさになるかについて、実証的に明らかにするためのモデルの構築と推計に必要なデータを収集している。さらに、実際の開発業者や開発自治体、実際にマンション建て替えを行った管理組合等からの聞き取り調査や視察等を行って、問題点を明らかにした。
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