初年度の研究は、(1)わが国における人的資源配置の実態、特に看護師の需給問題について基礎的な情報を整理し、問題点を抽出すること、(2)在宅医療における医師、看護師の役割分担、および地域特性を考慮した資源投入の実態(ケア提供時間や1日の訪問件数、そこに投入される医師、看護師の数)を観察調査から明らかにし、支払い意志の分析の概念モデルを構築すること、(3)支払い意志を検討する前提として、わが国の一般住民が現在および将来の医療提供体制にどのくらいの信頼を置いているかを、簡単な支払い意志探索により概観的に理解すること、であった。研究結果として、(1)については、看護師需給が病院を基本として議論されているが、実際には在宅における看護サービスニーズが顕在化しておらず、看護師需給に関する実態と統計との乖離を生んでいることが整理された。また(2)については、東京都心部で在宅における高度医療に取り組んでいる医師グループ、および関西圏で総合病院をベースにした訪問看護の実態を比較観察し、能力の高い看護師の不在が在宅医療の進展を阻害していることが再確認された。さらに(3)については、日本も(米国と類似して)現在及び将来の医療制度について不安をもっているが、たとえば看護師の不足を補填するためのコスト負担を進んでおこなうといった考え方は薄いことが明らかになった。これらの結果を多面的に再検討し、相互の関係性についての仮説をたてたうえで、2年目では実際の在宅医療場面における患者を含めた地域住民の支払い意志を調査し、その結果を前提としたときに、追加的な人的資源の配備をどのように実現すべきか政策的な議論をおこないたい。
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